宮沢が特異なキャラクターだから強く心を動かされるのだと思っていた。
　同じセリフでも、彼女が言うから説得力が違うのだと。

　僕にとっての最終回であった第４話、最大のクライマックスで彼女が自分をがんじがらめに動けなくしてしまったモノローグ。

　"だってわたし変だもの"

　恋の成就を妨げる最大の障害は　「恋のライバル」なんかじゃなくて、
　自分自身を信じられない、自分自身の心なんだ。

　"だってわたし変だもの"　"だから・・・"

　彼女の心の叫びはかつてないほどに僕の中に響き渡った。

　それは宮沢雪野の物語だからだと　ずっと思っていた。

　でもそれはちがうかもしれない。
　"だってわたし変だもの"
　その叫びは誰もがみんな持っている不安なんだ。それが僕らの足をすくませ、腕を絡めとる。そうして動けなくなった状況が恐ろしくって、逃げ出したくって。
　自分を動けなくしている「それ」の正体に気付きたくなくて。
　宮沢雪野が特別だったからじゃない。
　あれは、特別だった宮沢雪野の、普通の弱い部分だったんだ。

　それが分かれば、僕には『彼氏彼女の事情』はもう必要無い。
　他の作品と同じように、普通に、よく出来た娯楽作品として受け入れることができる。

　ほんとうにそれが分かったときには、きっと。