"何もしてあげられなかった"
　"してあげたいことが、たくさんあったのに"
　｢そんなことないよ｣
　｢もう、たくさんもらったよ｣
　｢それはもう、たくさんのものを｣

　何かをしてあげているつもりで、本当はそれよりもずっとずっとたくさんのものを貰っていたんだって、そんなことが世の中にはあるらしいよ。
　そして、そんなふうにして沢山のものを貰ったとき、人は自分の生に満足できる。そういうものらしい。
　それがわかるくらいなら、俺は｢死にかけ｣を名乗ったりしないがね。

　木戸を開き、外の暗い道へ足を踏み出す。
　戸の前で、膝を抱えて座り込んでいる少女。
「なにしてんだよ」
　顔を上げて、少女はまっすぐに彼の顔を見つめる。
　彼女の顔は、強い想いにあふれた強い顔、睨みつけるような表情だった。この作画は、秀逸だ。このシーンで、あの表情をするとは思わなかった。でもきっと、ここではあの顔でなければいけなかったんだと思う。

　カレカノの視聴者層って、どうなんだろう？
　いわゆる「アニメ好きな男の子」の平均値では、あの作品とは波長合わないと思う。普通に少女マンガだもの。
　俺自身は、少女マンガにも適応できる感性を持ち合わせていると思っていたけれど、正直、自信がない。俺は『彼氏彼女の事情』を正しく観ているだろうか？
　もしかしたら、俺なんかがこの番組を見ているのは既に間違いなのかもしれない。
　ただし、観るべきかもしれない層の人たちってきっと、アニメなんか見ない人たちだろう。